さて、米から招聘したスティグリッツ教授が官邸の広報とは異なる「アベノミクス全否定」をしていたことが分かった。またオフレコとされた会合の内容をスティグリッツ教授が文書で示し、安倍官邸は沈黙するばかり。
教授との会合で出されたのは「消費増税先送り」と云ったコメント報道だったが、文書には何処にもない。つまり、安倍官邸はスティグリッツ教授を招聘し、『消費増税先送りの根拠付けとなるコメントを取ることが目的であった事実が判明』したことになる。
教授は日本各紙の一斉報道に違和感を感じ、自分が云ってもいない「消費増税先送り」の材料(ダシ)にされたと認識し、自ら文書で公開したのだ。
正式な和訳に2日もかかったのは、官邸内で「検討」するためだったと見てよい。なぜこれを取り上げるかと云えば、そこに安倍官邸の思惑、すなわち夏の参議院選挙の争点に「消費増税先送り」を据える目論見があり、スティグリッツ教授はその印籠のために招聘されたと見るのが、相当だからである。
つまり安倍官邸は、参議院選挙の争点を「消費増税10%先送り」にすることを決定していると見られ、おそらく5月のサミット後に「世界の経済状況を鑑み」などと会見を開いて決断を下すつもりだろう。
補正予算は10兆円規模と云われ、また予算の前倒しも行なわれる見通しで、自民党定番の組織型ばら撒き選挙を打つ腹だと見てよい。
ダブル選挙は、まだ見えていないが、ないとも云えない。
安倍官邸は、消費増税を決定したのは民主党政権時だと他人のせいにでき、かつ、野党共闘の分断を図るにはこの道しかない。
だから確実にこの道を行くだろう。
気づいた岡田民進党代表は、増税の延期も視野に入れる。
しかし気づいただけでは乗じられるので、野党4党で協議すべきである。
スティグリッツ教授は、「アベノミクスは失敗」だと進言したわけで、だから和訳に2日もかかったのだ。
あれだけ気勢をあげていた「改憲」を引っ込め、野党提出の「安保法廃止法案」は審議すらしない。
盛り上がることはなにひとつせず、沈静化を狙いながら、消費増税先送りとばら撒きと組織選挙で闘う腹だ。
対する野党側は、全国で野党共闘を推進中で、また、衆参同時選挙の準備も始めた。
参議院選挙は、日程が動かないことから、野党にとって行動計画が立てやすい。
民進党の盛り上がりはいまひとつだが、26%ならそれほど悪いとは云えない。
一方、全国で夏の参議院選挙に向かって市民連合や勝手連がかなりの数で立ち上がりつつある。
市民連合は27日、37都道府県57団体が参加して意見交換会を開いた。
本紙が知るところ都内にも多数の大小勝手連が立ち上がっている。
これらはまだ推進しながら準備中の段階にある。
つまり沈静化と組織選挙を狙う与党側に対し、野党共闘を支援する市民側はそうはさせないと行動を始めている。
29日の安保法施行を受け、4月には全国の高裁所在地や大都市部の地裁に違憲訴訟が提起される。
参議院選挙に注目が集まるが、本安保法制違憲訴訟もまた重要な司法側の権利の行使となる。
三百人規模という法曹(元裁判官、検察官含む)・憲法学者・専門家が結集し、原告団は1000人規模の予定で、被侵害法益も固まっている。
日弁連も全国で集会やデモを予定している。
このように、沈静化を画策し、逃げるが勝ちの安倍官邸とそれを追う市民側の闘いの構図が別にある。
さて、消費増税先送り争点化のために招聘したスティグリッツ教授に、アベノミクスを完璧に否定された今、わざわざテレビ・新聞記者の大々的な囲み取材までやっての、参院選「消費増税先送り」争点化、勝てば「安保法」が承認されたという目論見は上手く行くだろうか。
時間はまだ100日もある。
本紙は、このスティグリッツ教授が示した官邸会合の内容こそが、強力な参議院選挙の武器になると思うがいかがだろうか。