米国は1980年代から、日本は10年遅れて1990年代から実質賃金(平均)が伸びていない。
一方、米国ではデファクトの世界標準となった企業がグローバルな富を占有し、そのような企業は巨万の富を得る。日本では、自動車や素材産業などに競争力があるが、エレクトロニクスは製品を失い、競争力は低下の一途にある。中国は世界の工場(生産基地)としての位置づけを確保し、先進国の多くが工場進出を行なっている。だが、賃金の高騰により、徐々にアセアンなどに工場が分散しつつある。
生産が海外に流出すると、国内はサービス産業化し、一般的なサービス産業は差別化がし難く、どうしても低賃金に陥りやすい。そのため先進国とりわけ日本のように資源がない国は、詰まるところ教育によるサービス産業の質向上を図る必要がある。
今も医師、弁護士などの資格職業も強い競争力(労働)を持つが、派遣業でも特殊技能の持ち主は安定した所得を得る蓋然性が高い。最近では、医薬品業界などにも資格の波が訪れているが、この資格制は重要な指針だ。
同じモノを海外で生産する場合、最終的な競争力が人材で決まるからである。
TPPは、大統領選で失速気味だが、ヒラリーの後背はNY金融資本であり、彼女が勝って批准されるだろう。
その場合、日本はこれまで保護されてきた様々な産業(市場)が、外圧に晒されることになる。
医薬品、医療産業などが挙げられる。
農業より更に厳しい。
その場合であっても、前記のように教育に力を入れれば、一定の競争力を得ることができ、それは所得や雇用につながる。
今日本の教育産業は、国家債務や人件費のこともあり、抑制されているが、目に見え票になる公共事業より、遥かに教育への投資のほうが経済生産と所得向上に寄与する。
鉄も鍛錬しなければ、有用にはならない。
いま日本は、エレクトロニクスで敗北した市場から、防衛などの国需産業にシフトしようとしているが間違いで、海外のIT企業が驚くほどのテクノロジーを有しているわけではない。
むしろ戦略的なデファクト創りに長けているというべきである。
しかし日本人の優秀な素材力を教育により鍛錬すれば、十分に世界で戦える。
ロシアの軍需力は極めて高いが、経済成長で勝っているのは中国であることも書いておきたい。
つまり世界の大きな市場を相手にする方が所得や雇用拡大に資するのだ。
民間が富めば、国が富むことになり、いまおきている公務員給与問題(官民格差)なども解消される。
成熟産業化したサービス産業は、資格化により総量規制が可能となる。
これは需要が有限な場合に有効だ。
人の価値を上げることは、グローバル化時代の競争力の指針になる。
いま安倍首相らが進める、意味不明の金融財政政策などは本質を見誤ったものでしかなく、最後は巨額の富ではなく、損失が残されるだけである。
個々の企業の競争力から、全体の競争力の底上げが求められている。
そうして国民が富めば、国が富む。
自ずと防衛力も向上する。
防衛力ばかりやってもロシアのように、軍需費で市中が潰れそうになる。
そろそろバカがやる政治から賢者が行なう政治に転換すべきである。