原発安全体制 砂上の楼閣
熊本地震は、大きな自然災害となったが、今も断続的な地震が続く。
政府の専門家は、南海トラフとの関係を否定するが、現在連続する地震が構造線に沿って起きていることは疑いの余地がない。そこで政府の所轄官庁に電話取材を行った。
まず気象庁の担当官(専門家)は、結論として「どこにいつどれくらいの地震が来るのかはわからない」が政府の地震(研究)本部で長期的な研究を行っているので、そこに当たってほしいとのことであった。
地震研究本部の専門家は、日本列島各所の地盤や断層の研究を行っており、見解は気象庁と同じく「どこにいつどれくらいの地震が来るのかはわからない」が、前記研究により地震が生じたとき想定される地震動についてはパラメータで出してあり、これらは誰でも閲覧できるとのことであったが、三陸沖(プレート型)地震について聞くと「想定外」と話す。また、過去の実績を調べると結果は死屍累々であったことも書いておきたい。
更に原発について聞くと、それは業務外で、原子力規制委員会が許認可庁であるとされ、それ以上は「業務外」との回答で、データの保証を求めると怒り出す始末だった。
次に内閣府の防災本部に取材すると、ここは原発の避難支援を支援するという部署で、安全性はやはり原子力規制委員会とのことであった。
資源エネルギー庁にも照会したが、やはり原子力規制委員会であった。
それらで得た情報に基づき、原子力規制委員会に取材した。
結論は、例えば川内原発のケースでは、震源を特定しない(活断層直下除くという意味)地震動として水平620ガル、垂直324ガルで許可したと回答があった。このデータの根拠は、現地の実査、地層の検討、地層の質、原発が立地している岩盤、原子力設備等を勘案したもので、シミュレーションも行っているとのことであった。
具体的な工学的物理学的内容については、今後取材に入る予定だが、規制庁の見解としては「この数値で安全性を保証する」というわけでなく、それは規制委員長が会見で述べたとおりとのことであった。
つまり規制庁としては、前記のような検討の結果、当該データを規制値として出しているのであって、また、実際の事業者である九州電力から提出された申請も検討のうえ、独自に審査を行っているとのことであった。
ひとつ確かなことは、水平620ガル、垂直324ガルを超える地震動が襲来しないことを保証しているわけではないという点である。仮にこれを超える地震動が襲来すれば、依然として「想定外」ということになる。
また責任について尋ねると、規制委員会は一義的に責任を負ってはいるが、最終的には「事業者」の責任とのことであった。つまり「事業者=電力会社」が安全責任を負っているということになるが、その電力会社は「規制委員会に認可された」ことを安全の理由にしているという「安全のもたれあい」関係が確認された。
この一連の取材での結論は、「想定外」の地震が襲来し事故が起きれば、規制委員会、事業者ともに「過去に例がない云々」で終わりということだと理解した。
政府の地震研究本部が過去外れだらけの実績から見れば、その科学的見解は到底「疎明」されているとは云いがたいものであった。安倍首相は、世界一安全な基準と云うが、そのような心証はまったく得られなかった。
政府の体制は、原子力災害対策特措法に基づくが、避難は自治体の責任で政府は後方支援であり、やれやれといった感がある。まとめると、①想定外の地震がないとは云えない、②最終的な事故の責任は事業者と自治体ということであったことを報告しておく。