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「札」ではない、「人材」

安倍首相は、GDP600兆円を目指すというが、その具体性はない。
黒田日銀総裁の質的量的緩和が幕を下ろす日はそう遠くない。
GPIFは、5兆円の損失を計上した。
今後、更なる損失が予測される。
失われた15年は20年になり、25年になりそうである。

すでに日本は成熟国家となり、繊維、農水産加工品、化成品、日用品、家具類、工具類ときて家電品、コンピュータ製品が海外産となっている。メイドインジャパンの影は薄くなり、周りを見渡せば、中国やアセアン製が圧倒的に多くなっている。

各国のGDPは、それを裏付けるように成長している。
日本はすでに7割がサービス産業となり、製造業は2割強しかシェアがない。
サービス産業は、特定専門業種(医療、ITなど)を除くと労働力の代替性が高く、付加価値が追求し難い構造にある。

このようななかで、競争を基礎に置く政策を実行すると貧富の差がますます広がる傾向になる。
事実、非正規雇用が増え、それは若者層だけでなく、高年層でかつては自営業者だった人たちも含まれる。
このような社会構造では、自由より規制が必要になる。
規制とは、需要が無限にないという現実を直視し、その供給を管理する手法が中心になる。
一方、それだけでは経済が成長しないので、新たな最終需要製品の創造が必要になる。

今の日本では、自動車や工作機械そして部品材料に輸出競争力があり、これらには広い産業ピラミッドが構築されている。同じようなかたちが、韓国のサムスンで、サムスンはスマホの製品力を基礎に、その部品材料をも自社製とすることでピラミッド全体の利益を確保している。

日本は、とりわけ電機・電子製品分野で世界で敗北しており、当該分野での逆襲が必要になっている。
つまり新たな最終需要製品の創造という付加価値生産の上乗せによる経済成長原資と、規制による過当な競争環境の是正によって、市場を保護し、ひいては雇用を保護する必要性に迫られている。
それは例えばサービス産業の資格化などが挙げられる。

資格があれば、雇用促進となり、逆に例えば薬剤師のように、いなければ特定医薬品が営業できないなどの規制が出来る。規制と資格化は一体である。
この資格化が広まることで、逆に一般労働者の競争環境が減少し、賃金が上がる可能性が高い。

サービス産業の特定労働産業化が規制の根幹である。
一方、世界的競争という観点からは、新たな最終需要製品の創造が必要であり、それは必ずしも電機・電子だけでなく、すでにコモディティ化した産業でも可能である。

基礎的競争ベネフィットは、新材料である。
新材料の開発と新たな最終需要製品の創造は表裏一体であり、いま安倍首相がやっているくだらない札すりばら撒きとは全く異なる。

真剣に付加価値開発を追及しないで、楽な方法で経済成長させる方法などない。
「札」ではない、「人材」と知るべきだ。