排外一国主義は問題を解決しない
トランプ氏の台頭とその過激な発言が物議を醸している。
しかしその支持の広がりが、共和党の草の根保守的支持基盤であるティーパーティーを含むものであることを踏まえればむべなるかなと思う。
いま米国は、覇権国の頂点にありながら、国内に産業の空洞化伴う格差社会、イラク・アフガン戦争の戦費負担並びに収拾の困難、帰還兵問題など複雑な解決しなければならない難題を抱えている。
世界の覇権国の矜持と誇りの裏には、疲れ果てた大国の病巣が広がっている。トランプ氏の発言は、その問題に対し「情緒」で訴えるもので、支持層を広げている。
だが排外主義や一国主義はヒトラーが一次大戦で課された重い賠償金と不況に苦しむドイツを蘇らせるために打ち出した諸政策と似ている。これらの政策が問題を解決することはなかった。なぜなら根幹にあるのが大衆に訴える「情緒」であったからである。
日本や韓国に駐留費を全額支払わせるとやくざのみかじめ料徴収のようなことを云ったところで、現実の格差社会や産業空洞化そして重く圧し掛かるイラク・アフガン問題が解決されるわけではない。
別にいま1900億支払っている費用を5900億にすることは、日本にとってそれほど問題を生じるとは思わない(おもいやり予算が隠れている)が、日本の世論や国民の「情緒」は確実に悪化する。何かを得ればなにかを失う。おそらく米国は、日韓という重要な東アジアの同盟国を中長期的に失うことになるだろう。
ドイツと云うより欧州は、以前からEUで懸案とされているNATOの代替としての欧州軍の創設を検討するだろう。ロシアはおそらくその経済圏のなかで融和を選択する。ドイツが核武装するなど悪夢でしかなく、ドイツ国民もそれを選択しない。
日本は成長するアセアンを基軸にアセアン+3を選択するだろう。これまで書いてきたように、朝鮮半島は本来同胞の国であり、体制の問題さえなければ本来南北に分離して戦争していること自体がおかしい。
田中角栄首相の頃、日本と中国の宰相が抱き合った。米国は激怒した。
その後中国は発展することになる。
日露平和条約が締結できれば、ロシアが成長するだろう。
日本の宰相とロシアの大統領が抱き合えば北東アジアの安全保障問題は解決する。
日中だけではだめだ。日露平和条約こそが、北東アジアの平和の要なのだ。
既にドイツとロシアの融和は進んでいる。
大衆に対し「情緒」で訴えるのは、政治的によく奏効するが、多くの場合問題を複雑にし、国益を失する場合が多い。いま現実に米国が抱えることになった問題とは、イラク・アフガン戦争(もう15年間以上続く)であって、要するに米国は「疲れ果てて」いるのだ。
コストに関しては、ラムズフェルド元国防長官時の再編方向があるので、その方向に着実に再編すればよい。
日本の過度の米軍駐留やとりわけ辺野古基地などは無用と分かるはず。
合理的に協議すれば解決策を見出すことは可能だ。
同時にいまの安保法のような、兵力を分散させる戦略も間違いだと分かる。
加えて云っておきたいことがある。
いま米国を蝕んでいるのは、外国ではなく、内在する行き過ぎた資本主義にあると。
最後に、湾岸戦争開戦に際し、誰もいない国会で演説したバーニー・サンダース議員の映像を紹介しておく。